今般の商標法条文改正草案は、計16条を改正し、新たに2条増設されます。条文改正草案のうち、重要と思われる6点を以下のとおり紹介します。

  1. 国内産業界の需要を満たし、国際的ハーモナイゼーションのため、商標登録出願案に対する加速審査のシステムを新設【第19条、第104条の改正】
  2. 商標図柄における機能性を有する部分の権利範囲の明文化【第30条の改正】
  3. 商標権効力の拘束を受けない指示性合理的使用、善意の先使用、及び権利消尽などの内容を明確化し、司法実務の適用と一致させた。【第36条の改正】
  4. 特許法体制を参考に、商標の登録が異議、評定及び廃止を経た時の確定時点及びその法的効果を明文化【第54条、62条、66条の改正】
  5. 特許法体制を参考に、商標登録の取消について、回復可能な法的利益を有するものが評定を請求できる依拠を明文化する。【第58条の改正】
  6. 商標の廃止請求の手続き要件の規定緩和。【第65条の改正】

条文の改正内容

【第19条第8項】新設

商標登録の出願について、出願人が即刻権利取得の必要がある時は、事実及び理由を明記して加速審査費を納付すれば、商標主務機関により加速審査を行う。ただし、商標主務機関が登録出願案に対し既に第1回目審査意見通知をしたものは、これを適用しない。

【第30条第4項】新設

商標図柄における、第1項第1号の機能性を含む部分を点線で表現していないものは、商標登録できない。点線で表現できないもので、且つ商標の一部に属さない旨を声明しないものも、同様である。【不専用の声明】

商標図柄における、第1項第1号の機能性を含む部分は、現行法では第29条規定により不専用を声明するが、公益性の配慮から商標使用により登録を得ることができないのであり、且つ商標の一部ではない。また、混同誤認の恐れの全体判断としてはならないため、機能性を含む部分が点線で表現できない時は登録できない旨を明文化する。

【第36条第1項第2号】改正

二、商業取引慣習の信義則に符合した方法で、商品または役務の使用目的を表示し、他人の商標を使用して以て該他人の商品または役務を示す必要のあるもの(は、該他人の商標権の効力に拘束されない)。ただし、その使用の結果関連消費者の混同誤認を招く虞があるものは、この限りでない。

【第54条第2項】新設

商標登録が異議により取消された後、以下のいずれかの事情があるものは確定とする。
一、 法に基づき行政救済を提起していないもの
二、 行政救済の提起が却下され確定したもの
商標の登録が異議により取消が確定したものは、その商標権の効力は初めから存在しなかったものとみなす。

【第62条、第54条第2項、第3項】

商標の評定にこれを準用する。

【第66条第2項、第3項】新設

商標の登録が処分により廃止が確定したものは、その商標権は請求または職権により廃止が提起された日以降から失効する。
前項の廃止の確定は、第54条第2項規定を準用する。

【第58条第3項】新設

利害関係者は商標登録の取消に対し、回復可能な法的利益を有する者は、
商標権が当然消滅または失効後、評定を請求できる。

【第65条の但書】改正(商標廃止の請求)

…ただし、請求人の請求が明らかに理由のないものは、直ちに却下できる。

※現行条文:ただし、請求人の請求が具体的事実証明がないか、またはその主張に明らかに理由のないものは、直ちに却下できる。今回の改正案では商標廃止の請求人の立証責任を軽減する